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時は流れても変わらぬままに

 皺と染みだらけの老婆ジャヤワナはマイランに目配せをして、彼女に大釜の側へ座らせると、クリケの手を神妙に取り、台座へと促した。

「お前さんがいかなるお人か、あたいは知ってるよ。お前さんは偉大なる方ではない。これまで何も成し遂げなかったし、これからも何かを成し遂げることもなかろう。お前さんは、かつて心底から剣の使徒となることに憧れた。そして、今こうして目の前にその剣がある。大いなる意思がお前さんを導こうとしておると言えばそうじゃ。だが、あたいはお前さんがその剣を呼び寄せたように思えて仕方が無い。まあ、だから、どうってこともない。あたいはお前さんについて良くも悪くも色々な思いを抱いてしまうってことかね」

 クリケはアル・カトスの剣を背中に背負い、ナクサズの剣が納められた紺色の鞘を掴んだ。そして、自分がそういう人間であったこと、今もそうであることをごく自然に思い、穏やかな気持ちで剣を腰に吊るした。

 こうして、ナクサズの剣は再びクリケの許へ戻って来たのである。


第四章 素直な気持ち 終

2012年1月11日水曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第七十四話

 
 
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