近藤裕希のページ
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剣の宣告
(お前はいつまで、そこに座っているつもりだ。何もしようとせず、何も出来ぬままに、お前はそこで朽ち果てようというのか。それが本当にお前の望みなのか、お前の幸せだというのか)
ある丘の上に座り、ぼんやりと側で花を摘む少女を眺めていた青年がふと空を見上げた。ちぎれ雲の群れが上空の風に煽られてドンドンと流れて行く。彼の心の内にその言葉は囁かれた。随分と昔に感じた感触。
彼の目の前にいる少女はいつまで経っても変わらない。変わらぬ彼女をずっと見つめ続けて来た。このままで良いのだろうか。彼は、自分の時間を止めたまま、ずっとこうして来た。
(お前が築こうとした理想は、お前が放棄したが故に偽りとなった。己の心から目を逸らし、お前が愛した同胞は偽善に溺れ、虚しくなろうとしている。今、お前の側にいる娘のように)
ナクサズの剣よ、お前はまたそうして俺を苛もうとする。お前はあたかも真実を語るように、ただ惨いだけの言葉を俺に投げつける。俺が戦いを挑んで何が変わるというのだ?何も変わりはしない。俺の未来へのちっぽけな希望など、どれだけ力を込めて投げかけようとも、現実の失望の広大な海に溶けて沈むだけ。俺が自分の幸せを守る為にここにこうして座っている事の何がいけないというのか。
(オッフェルマルトよ。お前が如何に思おうとも、取り繕おうとも、お前は、お前自身の本当の気持ちを押し隠す事など出来ぬ。お前のみならず、全ては定められたように移ろい行くのみなのだから)
オッフェルマルトは憐憫の情を込めて、彼の傍らで一心に花を摘む少女を見つめた。いつまでも子供のままの、彼が愛する女性のその姿を。
2011年12月5日月曜日
呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解
第四十二話