近藤裕希のページ
近藤裕希のページ
ハルヴァーナの冬
とうとう、クリケはハルヴァーナに帰って来た。今年の初夏、この地を去った時は、滴るような緑が満ち溢れていたハルヴァーナの平原も今は枯れ草と、その隙間に冷たく乾燥した黒々とした地面が見えるだけである。
何もかもが荒れ果てていた。ただ、冬が到来しただけということではない。オルファルリアはクリケに今年の夏の天候不順について話をした。世の中は常に豊穣であるわけではないのだ、と。
クリケは、女性と歩きながら豊かなハルヴァーナを歩いた夢を思い出し、この地の現実と重ね合わしてしまった。言葉にはならない様々な感情が沸き起り、彼の心の中で右往左往した。夢と現実の狭間で、自分はどう生きれば良いのか。
荒れ果てた大地に沿うように諦めと妥協に心を屈し、受け入れるしかないのか。夏に眩しく輝く太陽のような光を、夢を見る事は許されぬのか。
現実から目を逸らし、泡沫の夢を見る事。厳しい現実に向き合うあまりに、気が付けば夢を見たくなるその気持ちから目を逸らす事。
ねえ、ナクサズの剣よ。君とはもう別れてしまったけれど、僕は自分の人生を歩み始めたと思ったけれど、何処へ向かって歩いて行けば良いか、僕にはまだ分からないんだ。先の事なんか、全く分からない。ただ、僕がこれまで暮らして来たこの世界が、この世界の皆が誰も分からない方へ転がって行く、そんな気がするだけ。根拠なんか、無いよ。ただ、これまでに僕が見た風景、出会った人々。短い旅だったけれど、そんな気がしてならないんだ。ナクサズの剣よ、君は多分、何もかもを知っているんだろうね。どうしたらいいんだろう、僕はどうして暮らして行けばいいんだろう?
2011年12月2日金曜日
呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解
第三十九話