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大王国を貫きし刃

(俺以外にこの国の行く末を示し、率いる事の出来る者はおらぬ)

 リュネイル大王国の指導者となった深紅の薔薇騎士団団長グロウゼオ・ビュロスは、深夜となり、全ての者が去って冷えきった宮廷の玉座に座ったまま、一人静かに物思いに耽っていた。

 この世に生を受けて、五十年余。グロウゼオは大小様々な戦いを生き抜き、数知れぬ政敵を葬って来た。彼にとってこれまでにおける最大の戦いはフォルク・レード卿と激突したクロノスの大平原の決戦であった。

 グロウゼオはフォルク卿がどうしても許せなかった。彼は、平和の理想を謳い剣を取り、大王国を揺るがす騒乱を引き起こした。「平和を祈念しながら、戦争を引き起こした」彼の周囲には大王国をより理想的な国家にせんとする若者たちで溢れていた。彼はそうした者たち全てから尊敬の意を払われ、憧れの眼差しを向けられていた。

 一方で、グロウゼオは粛々と社会を乱す者たちを処断する為、王国中を駆け巡っていた。実質、社会を統制し、秩序をもたらしていたのはグロウゼオ率いる深紅の薔薇騎士団であったのだ。少なくとも、グロウゼオはそう自負している。

 そして、十五年と少し前のあの日、玉虫色の理想に陶酔し、フォルク卿を推戴した反乱軍を、現実の鉄槌でもって粉砕し、フォルク卿その人を猛然とこの手で討ち果たした。民の安寧を守る為に統治者が持つべきものは、理想ではない。如何に憎まれようとも、冷たき鋼の刃によって、何が許され、何が許されぬのかを明瞭に示す事なのだ。

 

2011年12月14日水曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第五十一話

 
 
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