近藤裕希のページ

 
 
 
 
 

ボルンウァッドのまどろみ

 悲しみの象は今日も夢を見た。

 遠いところにある花畑の丘。いつもの夢、コロモントの丘の夢。少女が一人で花を摘み、少し離れたところで痩身の青年が膝を抱え背を丸めてその姿を見つめている。

 彼の目は虚ろであった。彼は何か大切なものを失ったままずっとあの丘でそうして座っている。ずっと同じ風景を眺めながら。

 微睡から目覚めたボルンウァッドはいつものようにため息を吐いた。あの若者を悲しみの丘から解き放ってやりたいと願いつつも、彼にはどうすることもできない。

 彼の望みを叶えられるのはこの世でたった一人だけ。そう、お告げはあったが、それが誰なのか、永遠とも思われる瞑想を重ねて来たが、未だに分からない。

 つい最近出会った少年こそ、その者に違いないとボルンウァッドの大きな心臓はドクドクと興奮に脈打ったが、彼はナクサズの剣を棄てて故郷へと帰ってしまった。そして、未だに悲しみの丘の若者は虚ろにあの場所にしゃがんだままだ。

(いつまで、彼に寄り添っておればよいのやら)

 ボルンウァッドは己の無力さに、学問やら哲学やら瞑想といったものが腹立たしかった。真実とは何か。本当に、心の底から大切なものとは何なのか。

 悲しみの象の迷いは永遠に閉ざされる事はないのやもしれぬ。

 

2011年11月3日木曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第十話

 
 
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