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どうしようもない事情

「おい、お前。そんなとこで居眠りこいてるんじゃねえよ」

 頭部に鈍い衝撃と痛みがあり、ミリャルドは自分が置かれている状況を飲み込めぬまま、無意識に身を守ろうと地べたを転がり、跳ね起きた。使い古しの雑巾のような臭いのする薄汚い装束を身に纏い、蛇が絡まったような杖を握っている老人が、彼の前に仁王立ちしていた。

「な、何を。いや、誰なんだ」

「わしが何者かだと?ハン、そんなことも分からんのか。まあいい、お前みたいなチンケな若造じゃあ知るまいよ。そうだな、イバラの冠の老人殿と呼べ。分かったな?ミリャルド君。よし、じゃあ出掛けるぞ」

 老人は鼻息荒くミリャルドを怒鳴りつけると、打って変わったように機嫌良さげにクロノスの大平原を真南に向かって歩き出した。ミリャルドはまごつきながらも、老人の自信満々な態度に引きずられ、イバラの冠の老人なる人物に従い歩き始めた。

 それにしても、イバラの冠どころか帽子すら冠っていないのに何故にそんな名前を名乗るのだろう。いや、そもそも何故俺の名前を知っているのだろうか。以前、何処かで会ったかな?いやあ、こんな強烈な爺と一度会ったら忘れられないと思うけれど。

 ミリャルドは色々な思いを抱えながら、知らぬ間にクリケたちとは全く逆方向の道を歩く羽目になったのだった。

 

2011年11月30日水曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第三十七話

 
 
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