近藤裕希のページ
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荒れ果てた心を抱える老人と私
マイランは、煤けた破滅の平原が眼下に一望出来るジャルヴァラン人の城の高台のテラスにいた。彼女の傍らには、狂乱して疲れ果てた老人が、揺り椅子に揺られながら眠っている。彼女は、時にうなされるのかくぐもったうめき声を上げる老人を切なそうに見つめ、そっと老人の痩せて丸くなった背中をさすってやった。
「ほら、先生。今日も夕陽が綺麗。何もかもが燃え尽くされて黒い灰しか残っていないこの場所ですら、お日様はオレンジ色に染まるのね」
先生は何がそんなに欲しいのかしら。こんなに苦しんでまで何が。私は退屈。本当に退屈だから、何か楽しい事がしたい。そう思って、あっちこっちに行くけれど、ついつい先生の様子を伺いたくなる気持ちになるのよね。
なんだか、先生は私の苦しみを代わりに抱えてくれているみたい。分かってるのよ、別にそんなわけじゃないって事くらい。でも、先生が何かの幻を見て恐怖に絶叫する姿を見ると、私、慰められるの。だから、せめて先生の支えになってあげたいって思っちゃうの。私って、馬鹿よね。いつまで、こんな事、続けるんだろうね。
マイランは、老人の背中から微かに伝わる温もりと荒れ果てた平原に沈む夕陽の暖かさを感じながら、あの人の事を憶っていた。
2011年11月26日土曜日
呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解
第三十三話