近藤裕希のページ
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祝福に酔う
今、王都ラァフの政治の中枢である宮廷の王間に、人々が集い始めている。深紅の薔薇騎士団団長グロウゼオ・ビュロスの呼び掛けによるものだった。行く末の見えぬこの時期に、グロウゼオはリュネイル人が営々と築いて来たこの国を大いなる意思に返上し、委ねるべきだとの主張を展開し、その為にはまず預言者シュメロを探す必要があるとした。今は、シュメロを探す為に混乱し機能不全に陥っている大王国の組織を再編成する。それ故に政府高官は直ちに宮廷へ出廷せよ、との号を下したのだ。
本来ならば、大王国最大の騎士団とはいえ、宮廷を取り仕切って来た政府高官に命令する権限はグロウゼオには無い。だが、これからどうすれば良いのか途方に暮れていた高官たちは、自分たちが責任を負うこと無く打開策を練れるこの号令を好機と捉え、それとなく互いに示し合わせていそいそと王間へと足を運び出したのである。
それでも、王間へ出仕した高官たちは、グロウゼオが誰の許しも無く大王国の玉座に腰を下ろしていることに驚きの表情を隠せずにいた。高官の誰もが、グロウゼオの大胆さに畏怖しつつも嫉妬を覚え、彼から命令書を渡され退いた後、深紅の薔薇騎士団の影響下にある騎士たちがいない場所で徒党を成してはグロウゼオの陰口を言い合い、その身の程知らずを嘲った。そして、それぞれが不安な面持ちのまま退廷し、新たなる大王国の指導者グロウゼオの名においてそれぞれの組織を運営し始めた。
グロウゼオの登場により、大王国の政治的混乱は嘘のように鎮静した。王都ラァフの民は皆、先行きの不安にうなだれていたが、グロウゼオが神秘的な紋様が刻まれた銀の甲冑に深紅のマントをなびかせつつ、大王国の心臓部にある王の尖塔から大王国中に轟かさんとする彼の演説を耳を澄ませて聴き、やがて彼が大王国を導くと高らかに宣言した瞬間、王都は新しい時代の幕が開けた事を知り、歓喜に揺れた。
栄華の絶頂のこの時、人間の理想郷として築かれて来たこのリュネイル大王国が崩壊するなどと、今は誰も想像だにしなかった。それも、己ら自身の手により全てを失うなど。いや、心の奥底では気付いていたかもしれない。しかし、それはありはしない、あってはならぬ事だったのだ。
第二章 欺瞞の代償 終
2011年11月23日水曜日
呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解
第三十話