近藤裕希のページ

 
 
 
 
 

本当の事と嘘の事

 いつも私は自分を騙して来た。いつしか、私は様々なものに縛られ、身動きが取れなくなり、自分が本当に望むものから目を背けるようになった。善良な人間であろうと懸命になるあまり、気がつけば私は悪党となっていた。いつ、何をどう間違えたのか、私には分からぬ。

 ただ、こうして年老いて自分の生きて来た足跡を振り返ってみるに、世の中に良いも悪いもなかった。そのようなしがらみは己の心の内に、己自身で勝手に課していた愚かなる思い込みに過ぎなかったのだ。

 私に酷い仕打ちをした者もいた。私を愛してくれた者もいた。こうして、何もかもが終わりを告げようとするこの時に思うのは、憎しみでも愛情でもない。ただ、自分の人生がそうあったという記憶と、それをあるがままに受け止める今の己があるだけだ。他の誰にとっても意味の無い人生であった。だが、私だけには意味のある人生だったのだ。何も望まぬ。もう、いい。それだけ分かれば、それでいいのだ。

 

2011年11月20日日曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第二十七話

 
 
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