近藤裕希のページ
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絶対の玉座に訪れし客人
遠い昔に焼き尽され、今も残り火が燻り続ける破滅の平原に、唯一、一点のくすみも無いジャルヴァラン人の王が住まう城がある。一月程前、金箔で肌を塗りたくったおびただしい数のジャルヴァラン人がここに集結し、狂気に満ちた老人の号令のもと、リュネイル大王国へと進軍して行き、その後、ジャルヴァラン人は一人たりともこの城へは帰還しなかった。
狂気に冒された老人は、ジャルヴァラン人が全滅したことついて何も痛痒を感じなかった。ただ、ジャルヴァラン人が消滅したその現象が、リュネイル人との血で血を洗う戦いの結実ではなく、何か異常な(異常な老人ですら異常と感じる)力によるものであることに疑念を感じた。何も我に比すべき存在は無いと信じて来たその自信を揺らがせるだけの不可思議な力だ。
「我は何を血迷うておる。我より優れる者など一人たりともおらんのに」
老人が座す絶対の玉座の間より遠くの方で鉄の扉が軋み開く音が聞こえた。
「誰じゃ!誰がこの城へ参ってよいと申したのじゃ!我以外にそれを許可するものはおらん。そして、我は永久にそのような許可など出さぬのじゃ!」
ひた、ひた、と軽い足音が老人のいる玉間へと迫って来た。老人は狂乱し、自分の顔や首を掻きむしり、しゃがれ声でしばらく意味不明の言葉をわめき散らした後、玉座に顔をうずめて嗚咽した。
「ごきげんよう、頭がイカレちゃった先生。また、私の遊びに付き合ってくださいな」
甘ったるい声を玉座の老人の耳元にふんわりと含ませ、マイランはそっと哀れな老人の肩をやさしく包容したのだった。
2011年11月16日水曜日
呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解
第二十三話