近藤裕希のページ

 
 
 
 
 

兆しが空を舞う

 私はずっと空の上を旋回し、下々の生き物の暮らしを見守って来た。片方の頭でリュネイル大王国の人々を見守り、もう一つの頭でジャルヴァランの人々を見守っていた。

 なんと悲しいことか。互いに互いを否定し合いながら、誰も救われる者はおらなんだ。救われぬ者たちは、みな、私の姿を目にすると両手を広げ目を閉ざす。まるで、私が彼らを救うために現れたと信じているように。

 悲しい。私は悲しい。私は誰も救わぬ、救えぬのだ。人を救えるものがいるとしたら、それはただ一人、その者自身しかおらぬのだ。己の苦しみより逃れんとして、他にすがるは、まさに、地獄の底なし沼に足を踏み入れ、もがくに過ぎぬ所業。二度と、極楽浄土には戻れはせぬのだ。

 私は伝えよう。一見清冽に見える我が瞳を覗き、私の本当の姿を知り、なお、私を崇める者がいるなら、その者に私が守るたった一つの秘密を伝えるとしよう。

 いつか、その日が来るまで、私はこの大空を羽ばたき続ける。穢れた心を内に秘め、黄金の羽毛を舞い散らせながら。

 

2011年11月10日木曜日

呪いと奇蹟と祝福と 第二篇:大王国の瓦解

第十七話

 
 
Made on a Mac
前へ
 
次へ