

TAKENORI YOSHIKAWA
2010年9月4日土曜日
ティンツとの出会い>>
ティンツが結成して2年程経ってからだったと思いますが、彼女達の練習を聴かせてもらえる機会がありました。彼女達のサウンドの第一印象は「きちんと時間をかけてリハーサルを積み重ね、しっかりと練り込んだ演奏をするんだなあ」というものでした。ただ所々アピールの仕方や表現の方法に弱さを感じたので、その部分のアドバイスをさせてもらったように記憶しています。
その後2007年のトロンボーンクァルテットコンクール・イン・ジパングで優勝。ティンツの名前が一躍知られるようになります。それを機に彼女達は演奏内容やスタイルを魅力あるものに進化させていったように思えます。幸いなことにその後も度々リハーサルを聴かせてもらっています。その都度強く感じることは“彼女達の演奏には発表会のような雰囲気はなく、プロ奏者としてクオリティーの高いステージを創り上げていこうとする、しかもそれはティンツにしか出来ないものとなっている”というものでした。私は彼女達は早い時期から確固とした自分たちのスタイルを築き上げて来たのではないかと思っています。ですから私が何かアドバイスをするにしても細かなニュアンスに対しコメントをしてきたにすぎません。初めて聴いた時から、ティンツはプロのトロンボーンアンサンブルになろうとしていたし、完全になっていたと言っても過言は無いでしょう。それはメンバー4人の想いや目指すものがはっきり見えていたということ、さらにリハーサルを積んでコンサートを経験していった結果だと思うのです。
百花繚乱>>
2009年に開催したトロンボーンカルテットの祭典「百花繚乱」にも当然参加してもらいました。自身が演奏として関わった2日間のみならず、数多い全てのコンサートにメンバーの誰かしらが聴きに来ていたのがティンツでした。これは出来るようでなかなか出来ることではありません。少しでも自分たちに得るものがあればと、貪欲に吸収しようとしていた姿勢が伺われます。演奏家として完成していくのに必要な努力だと思いますし、真摯なその姿勢に尊敬の念を抱きました。
ティンツの練習風景をみていると驚かされる事があります。練習時のメンバー同士のやり取りがとてもきちんとしているのです。学生時代の仲の良いメンバーが集まってユニットを組むことはよくある話です。音楽大学時代は1番パートを吹く人が仕切る人、それ以外が従う人と関係がはっきりしていたり、また先輩後輩であるが故に上意下達に終始してしまったりするものです。そして卒業してもそれは簡単に抜けるものではありません。しかしティンツは同じ大学の先輩後輩であるにもかかわらず、学生時代の「枠」や不自由さから解放されているような気がします。礼儀正しく、しかもフレンドリーな彼女達の会話から豊かな人間性を強く感じます。自分達が何をすれば駄目になっていくということを全員が理解していますし、何をすれば発展していくのかを知っている極めて聡明なグループなのです。

彼女達は、2010年の2月にミシェル・ベッケさんとの共演を果たしました。そんなこととは知らずに東京公演に足を運んだ方がほとんどだったに違いありません。私もパリ・トロンボーン・カルテットが大好きで、かつて来日の度に演奏会場に足を運んだものです。今回ベッケさんはご自身の大事故を克服し久しぶりの来日を果たされたわけで、10年以上ぶりに聴くコンサートは私にとって正に至福の時間でした。そしてサプライズアンコールにベッケさんと共演するという大役に抜擢されたのがティンツ。私だけでなく多くのトロンボーンファンにとって大感激の企画になったと思います。やはりトロンボーンアンサンブルの中のベッケさんを聴きたいと思っていた人はたくさんいたでしょうから。でもどうでしょう。かたや世界的な大御所であるミシェル・ベッケ氏。たとえアンコールといえども、彼女達にとって神様的存在のベッケさんとの共演は、それが例えば私たちZIPANGであったとしても喜び以上に強く緊張を強いられる時間となったはずなのです。永く待ち望まれたベッケさんの演奏会、その足を引っ張るわけにはいきません。それ以上に、どうしたらベッケさんの演奏会に華を添えられるだろう・・・それはそれは実は並大抵のことではないのです。この一曲のためにティンツがどれだけ考え、サウンドを作り上げて来たか。本番の彼女達の吹く姿を見ながら「プロ奏者」としてのプライドを感じましたし、高い集中力で最高のステージを作ろうとしているのがわかる一瞬でした。しかもベッケさん自身その時をとても楽しんでいらっしゃったように感じ本当に嬉しかった。ティンツのパフォーマンスのおかげもあって、心からの拍手を送ることができたのです。
トロンボーン・クァルテットの響演>>
9月21日にはクァルテットコンクール優勝団体3団体と我々ZIPANGが共演します。今回のステージでティンツは全ての曲を高嶋圭子さんの作品で臨んできます。彼女達のカラーを完全に打ち出してきているのです。また作曲家高嶋圭子さんの存在をアピールすることでお互いを高めようとしているように感じます。恐らく彼女達は際立った曲作りをしてくるでしょう。そしてはっきりと主張のあるステージを展開してくれると思います。今回もまた自分たちのやろうとしていることを全面に押し出し、単にジョイントコンサートに出演する、というようには考えていないのだと思います。またもや観客に対するプロ意識を強く感じさせてくれるはずです。そういった意味でも私は当日のステージをとても楽しみにしています。
ティンツの歩むべき道>>
世界に名だたるトロンボーン・カルテットはいくつも存在します。スローカー・トロンボーン四重奏団、パリ・トロンボーン四重奏団、東京トロンボーン四重奏団等。そういった彼らのサウンド、レパートリー、音楽性、に匹敵する全てのものを高次元で持ち合わせていないと、聴衆に感動を与えることはできません。ティンツはそうなろうとしているし、なって欲しい。何故なら彼女達はその可能性を持っているからです。是非、このまま発展し続けていってほしいと思います。女性四人のユニットともなると、まだまだ男社会が長かったこの世界で物珍しさを感じる人も少なからずいると思います。でもティンツはその次元を超えた存在を作り上げていきつつあると思っています。そして女性だからこそここまで出来るんだと言うことを示していってほしい。
私は彼女達にトロンボーンカルテットの「伝道師」になっていってほしいと思っています。世界に名だたるカルテットと同様、ティンツが大きく羽ばたいてゆくことを大いに期待しています。