日本医科大学形成外科

機械生物学・創傷治癒研究室

Mechanobiology and Wound Healing Laboratory

 

研究員

河邊京子            日本医科大学 形成外科 大学院生

Hakan Orbey     日本医科大学 形成外科 大学院生 

土肥輝之            日本医科大学 形成外科 研究生

宮崎邦夫            自治医科大学 形成外科


留学生

Caglayan Yagmur, M.D.    トルコ共和国 Ondokuz Mayis 大学 形成外科

2009.6.29 – 2009.7.30

Chenyu Huang, M.D., Ph.D.    中華人民共和国 Meitan General 病院 形成外科

2009.9.1 – 2010.8.31







主な研究課題

1. 力学的刺激を付加した幹細胞による三次元組織再生

2. ケロイド・肥厚性瘢痕の成因解明

  1. 3.瘢痕治療の開発


主任研究員 (Principal Investigator: PI)

小川令(おがわれい, Rei Ogawa, M.D., Ph.D.)

URL<http://y7.net/r.ogawa/jp>

略歴

1999年    日本医科大学卒業

1999年    同大学形成外科入局

2005年    同大学大学院修了

2005年    同大学形成外科助手

2005年    会津中央病院形成外科部長

2006年    日本医科大学形成外科講師

               同大学付属病院形成外科・美容外科医局長

2007年    米国ハーバード大学ブリガムウィメンズ病院形成外科研究員

2009年    日本医科大学形成外科准教授

               同大学付属病院形成外科・美容外科医局長

研究室長 (Laboratory Manager)

赤石諭史(あかいしさとし, Satoshi Akaishi, M.D., Ph.D.)

略歴

2000年 日本医科大学卒業

2000年 同大学高度救命救急センター入局

2002年 同大学形成外科入局

2005年 会津中央病院形成外科部長

2006年 日本医科大学形成外科助手

2007年 同大学付属病院形成外科・美容外科医局長

2009年 日本医科大学形成外科講師

2010年 スタンフォード大学形成外科研究員(予定)

研究内容

1. 力学的刺激を付加した幹細胞による三次元組織再生

 三次元構造である人間の体は、地球の重力をはじめとする様々な物理的な力に影響を受けて成り立っています。体の骨格を形成する骨や軟骨は、体重を支えて成長します。関節の軟骨は関節液による水圧(静水圧)の多大な影響を受けています。皮膚は日常生活による運動で絶えず伸展・収縮を繰り返し、血管は血液の流れで常に物理的な力を受けています。さらにこれを細胞レベルで見てみると、細胞自体も物理的な力を受けて形態学的に変化したり、細胞内外での物質の移動が生じています。これによって細胞の遺伝子発現が調節され、さまざまな役割を担っていることがわかってきました。これを利用して、組織を再生しようとするのが本研究室の研究の一つのテーマです。細胞に物理的な刺激を与えることによって生じる変化を解明するとともに、意図的に幹細胞に力学的刺激を加え、機能を持った目的の細胞に分化させ、三次元組織の再生を行うことを試みています。







2. ケロイド・肥厚性瘢痕の成因解明

 ケロイドや肥厚性瘢痕は、傷が修復される創傷治癒過程の最終段階である「線維化」が異常に生じる疾患です。みみず腫れのように瘢痕が赤くもりあがり、慢性的に瘢痕で炎症が続きます。特にケロイドではその炎症がたいへん強く、正常の皮膚にもどんどん広がっていく特徴を持っています。たいへん興味深いのは、このケロイドがヒトにしかできないのです。遺伝子が97%以上同じといわれているチンパンジーですら、ケロイドができません。また人種によってケロイドの発生率が異なることも知られています。また家族が皆、ケロイドや肥厚性瘢痕を生じやすい体質である、ということも稀ではありません。

 当研究室の主任研究員である小川が2007年から2009年まで研究員として仕事をしていた米国ハーバード大学ブリガムウィメンズ病院の組織工学・創傷治癒研究室をはじめとして、世界中の各医療機関と、このケロイド・肥厚性瘢痕の成因解明を目的として、多くの共同研究をおこなっています。特にわれわれの研究質の瘢痕における力学的刺激の解析、コンピューターシュミレーションを用いたケロイドの解析は世界的に評価され、神経原性炎症説、メカノレセプター説、その他の仮説がその成因として注目されています。

ケロイドにかかる皮膚張力のコンピューター解析。

ケロイド周囲の皮膚にかかる力が大きくなっていることがわかる。

(Akaishi S, Akimoto M, Ogawa R, Hyakusoku H. The relationship between keloid growth pattern and stretching tension: visual analysis using the finite element method. Ann Plast Surg 60: 445-451, 2008.)

I:細胞, II:細胞外基質, III:細胞接着分子

A: 機械感受性イオンチャネル, B: インテグリン, C: アクチンフィラメント

細胞は、イオンチャネルや細胞骨格、細胞接着分子などのメカノレセプター(メカノセンサー)を通じて外部からの力学的刺激に応答し、種々の生命活動を制御していると考えられている。

(Ogawa R. Keloid and hypertrophic scarring may result from a mechanoreceptor or mechanosensitive nociceptor disorder. Med Hypotheses. 2008 Oct;71(4):493-500.)

脂肪幹細胞を、TGFβを含んだ培地にて軟骨細胞に分化誘導し、コラーゲンスポンジにて三次元培養した後、力学的刺激の一つである静水圧を加えると、加えなかったものに比べて、質の高い軟骨が再生される。

(Ogawa R, Mizuno S, Murphy GF, Orgill DP. The Effect of Hydrostatic Pressure on 3-D Chondroinduction of Human Adipose-Derived Stem Cells. Tissue Eng Part A. 2009, IN PRESS.)

ケロイドにおける神経原性炎症仮説の模式図。

皮膚の張力をはじめとする力学的刺激を神経線維が感じ、そこから放出される神経伝達物質が原因となってケロイドや肥厚性瘢痕が生じている可能性を考えて研究している。

(Akaishi S, Ogawa R, Hyakusoku H. Keloid and hypertrophic scar: neurogenic inflammation hypotheses. Med Hypotheses. 2008;71(1):32-8.)

 

3. 瘢痕治療の開発

 われわれの研究室は、日本の瘢痕・ケロイド治療研究会の中核を担ってきました。この研究会では日本中の知識を総動員して、瘢痕・ケロイドの治療法開発に向けた討論を行い、Scar Meetingを通じて世界に情報を発信し続けています。Scar Meetingでは、当研究室の主任研究員である小川がBoard Memberとして世界の瘢痕治療のリーダーたちと世界的な活動を行っています。2010年には東京にてInternational Scar Meeting in Tokyo 2010を開催予定であり、日本が世界に先駆けて先駆的な治療法を開発している成果を示します。

日本医科大学付属病院形成外科・美容外科におけるケロイド治療のデータ。

われわれは難治性のケロイドや肥厚性瘢痕に対して手術による切除および術後放射線治療を実践してきた。部位別に異なる線量を照射するプロトコルを世界で初めて報告し、海外の教科書にも掲載されている。

(Ogawa R, Miyashita T, Hyakusoku H, Akaishi S, Kuribayashi S, Tateno A. Postoperative radiation protocol for keloids and hypertrophic scars: statistical analysis of 370 sites followed for over 18 months. Ann Plast Surg. 2007 Dec;59(6):688-91.)